◆(岡本康宏君) おはようございます。さきの補欠選挙で緑区の皆様から選出いただきました岡本康宏です。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 それでは、お許しをいただきましたので、通告に従いまして、初めての質問をさせていただきます。
 本日は、4月に起きましたJR福知山線列車脱線事故に関することから幾つかお聞きしたいと思います。
 先週、6月20日になりますが、4月25日の事故発生以来55日ぶりの運転が再開されました。テレビでは久しぶりに通勤ラッシュの模様が映し出されていましたが、反面、事故により重傷を負い、一命を取りとめられた方の紹介もされていました。その方は当時の恐怖心からとても電車に乗れる心理状態ではないというもので、事故現場のカーブをゆっくり走る電車を見ながら手を合わせ、涙を流している姿が印象的でした。このように多くの人に深い悲しみと心の傷を与え、この先も消えることのない御遺族の心の痛みを考えますと、改めてこの事故の重大さを思い知らされました。この場をおかりし、亡くなられた方、そして御遺族の方に対しまして、心より御冥福をお祈り申し上げます。また、被害を受けられた方々には、心よりお見舞いを申し上げます。
 さて、この列車事故では乗客、乗員約580名のうち、亡くなられた方が107名、負傷された方が460名と、近年の列車事故ではまれに見る大惨事になってしまいました。テレビなどでは事故の原因等を中心にさまざまな報道がされていましたが、私が注目いたしましたのは、事故直後の救助活動の様子でした。アルミ製の列車がまるで紙くずのようにマンションの1階に折り畳まれ、原形をとどめないぐらい破壊された状況は、皆様の記憶にも新しいと思います。そのような状況の中での消防隊による懸命な救助活動が映し出されていました。次々と運び出される遺体には目を覆いたくなる思いでしたが、しかし中には明らかに呼吸をしていたり、かすかな動きがある方も見え、安心した記憶があります。
 私はこのときふと気づいたのですが、運び出される負傷のほとんどの方々に何か札のようなものが手、足、首などにかけられているのが見えました。そのときは何だろうという程度で見ていましたが、後になってからある医療関係のテレビで紹介されていたのを思い出し、もしかしたらあれがトリアージタグなのかと思い出しました。どうしても気になったのでインターネットなどで調べてみると、やはりこの列車脱線事故の救助活動で効果的に取り入れられたことがわかりました。
 このトリアージタグという言葉は初めて耳にする方も多いかと思います。トリアージとはもともとフランス語のトリエール、より分けるとか分別するという意味の言葉が語源とされているそうで、もともとは収穫されたコーヒー豆やブドウを選別する際に使われた言葉だそうです。その後、ナポレオン時代には負傷兵の医療救護のため、負傷の度合いによって効果的に選別をすることが行われるようになり、このときトリアージという言葉が使われるようになったと言われているそうです。
 今回の列車脱線事故のように、短い時間に多くの死傷者が発生するような場合、救護するために必要な医療の物的あるいは人的要素は限りなく制限されるのは言うまでもありません。災害の内容、現場の地理的条件、環境、自然条件などさまざまな要因が働く中で、限られた医療資源を最大限に生かし、多数の傷病者に対して最善の医療処置を行うためには、このトリアージ、つまり傷病者の選別が重要なポイントとなってくるのではないでしょうか。簡単に言いますと、優先順位をつけずに搬送だけを繰り返していると、治療が手おくれとなったり、後方の支援施設が対応できなくなったり、混乱がひどくなり、助かる命も失うことになりかねぬからです。すなわち、多数いる傷病者を緊急治療、準緊急治療、軽傷、死亡の4段階に分類し、先ほど御紹介しましたタグ、いわゆるカードのようなものによりそれぞれ赤、黄、緑、黒に色分けをして救護活動を行うものだそうです。
 タグは、水にぬれても字が書けるなど、3枚つづりで1枚目は災害現場用、2枚目は搬送機関用、3枚目本体は収容医療機関用となり、簡易カルテとして利用することも可能なものであります。また、受け入れ患者総数や傷病程度別患者数をより的確に把握することもできます。議長にお許しをいただいておりますので、皆様にトリアージタグをお見せします。これがトリアージタグです。これを実施することにより優先順位が明確になり、負傷者に対して効果的な救護活動が行われるということになるわけです。
 しかし、一刻一秒を争う緊迫した状況が続く災害現場では、救助する消防隊員や救急隊員のストレスははかり知れないものと想像されます。そのような状況の中で次々と救助される傷病者を選別するという作業は、これまた大変な作業になるのではないでしょうか。日ごろはほんのわずかでも望みのある傷病者に対して、全力を尽くして救命活動を行っている救急救命士を初めとする救急隊員が、集団災害の現場ではこのような傷病者に対して黒いタグ、つまり搬送しても助かる見込みがないものと判断せざるを得ない状況も考えられるということです。これはまさに想像を超えた大変な作業だと私は思います。
 しかし、今回の列車脱線事故は対岸の火事ではなく、私たち名古屋市においても起こり得る可能性はゼロではありません。また、いつ起きてもおかしくない東海地震、東南海地震の発生を考えますと、市内全域あちらこちらでこのような災害現場が発生することが予想されますし、政府の中央防災会議がまとめた試算によりますと、東海地震が起きた場合の想定される最悪のケースで、死者9,200人、全壊家屋は46万棟との発表もありました。
 そこで、消防長にお伺いいたします。
 第1に、このような状況下において、消防局としてこのトリアージについて組織的にどのように取り組んでいるのか。第2に、先ほど申し上げましたように、災害現場でのトリアージは救急隊員等にかなりの負担がかかると思います。このような現場で耐えられる隊員の育成など教育・訓練等がどのように行われているのか。そして最後に、東海地震、東南海地震の強化地域、推進地域に指定されている名古屋市の市民に対して、私はこのトリアージについてもっと広報していくべきではと考えますが、この点についてお考えをお伺いいたします。
 次に、救急救命講習についてですが、もし名古屋に大規模災害が発生した場合、あの阪神・淡路大震災での神戸市が多くの教訓を残してくれたように、大切なことは、やはり自分たちのまちは自分たちで守るということです。ある被災者へのアンケート結果を見ても、被災したとき一番頼りになったのはという問いかけに、多くの人が、家族を初め隣近所の方と答えています。私もそう考えますが、もう少し広い視野で考えると、災害時に頼りになりそうな人を年代別で考えてみたとき、私は高校生、大学生の世代が大きな役割を果たせるのではないかと考えます。大規模災害時には家屋が倒壊し、あちらこちらで火災が発生するなど過酷な状況が考えられます。このような状況の中でも、若く、体力的、知力的にも最も期待のできる年代が高校生や大学生の世代ではないでしょうか。
 人を助け出す上で大きなポイントとなるのが、救命措置などの知識を持っているかいないかではないかと思います。ただ助け出すだけではなく、救助する人の状態を観察し、救助した後にも適切な救急処置ができれば、かなりの効果が期待できます。しかし、現段階では高校生や大学生の世代が十分な救命知識を持っているとは実感として感じられません。現在名古屋市では、定期的に救急救命講習が行われていますが、高校生、大学生の世代の講習は少ないのではないでしょうか。私は、救命知識の普及について、高校生や大学生にターゲットを絞った施策が必要ではないかと考えますが、この点につきまして消防長のお考えをお伺いしたいと思います。
 以上で、私の第1回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

◎消防長(田中辰雄君) 集団災害時の救急活動と若年層に対する救命知識の普及方策につきまして、数点のお尋ねをいただきました。
 まず初めに、傷病者の緊急度、重症度の選別、いわゆるトリアージの組織的な取り組みについてでございますが、東海・東南海地震、またJR福知山線のような列車脱線事故が発生した場合、多数の傷病者が発生することが予想されます。このような場合、傷病者の方に対してそれぞれの傷病程度に応じた医療を提供し、一人でも多くの方を救命するために、傷病者を救出し、トリアージを行い、応急処置、搬送といった一連の活動を組織的に行う必要があることは議員御指摘のとおりであります。消防局といたしましては、出動部隊の規模を事前計画として設定するとともに、各部隊の活動要領を策定し、集団災害時の救急救助活動体制を整えております。また、災害現場における傷病者のトリアージにつきましては、医師の指導のもとに行うことを基本としておりますが、医師が現場に到着するまでの間は救急隊員がその任に当たりますことから、救急隊員がトリアージを行う場合の判断基準を定めております。今後とも計画の実効性を向上させるため、訓練内容の充実を図るとともに、災害現場へ医師などの派遣が迅速に行われますよう、医療機関等との連携にも努めてまいります。
 2点目の救急隊員に対するトリアージ教育についてでございますが、救急隊員を養成する教育課程におきまして、トリアージに関する教育と訓練を実施するとともに、救急隊員によるトリアージが行われる場面を組み入れた集団災害訓練を定期的に実施し、実災害に備えているところであります。今後もあらゆる場面をとらえ、実災害において救急隊員によるトリアージが迅速・的確に行われるよう努めてまいります。
 3点目の市民の方に対するトリアージの広報でございますが、現在は集団災害の訓練を行う際に、参加していただいた市民の方に対しましてトリアージについて説明を行い、理解をしていただいているところでございます。トリアージは、多数の傷病者に対する医療救護活動を行う上で重要な行為でありますので、市民の方に広く理解していただくことは、大規模な災害により発生した多数の傷病者にそれぞれの傷病程度に応じた医療を提供し、一人でも多くの方を救命するために必要なことと考えております。今後は救命講習、防災訓練等の機会をとらえまして、トリアージにつきまして理解をしていただくよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、高校生、大学生などの若い世代の方に対する救命知識の普及方策についてでございます。若い世代の方も含め、市民の多くの方に救命のための知識や技術を身につけていただくために、救命講習を開催して応急手当てや普及啓発を推進しているところでございます。昨年度に本市が行いました救命講習の受講者は1万6336人で、年代別には10代が1,645人、20代が3,990人、10代から20代までの受講者の合計は5,635人となっておりまして、全体の34.5%を占めております。多くの高校生や大学生などの若い世代の方が応急手当ての知識、技術を習得するためには、より積極的に救命講習に参加していただく必要がありますことから、今後とも若い世代の方がより多く救命講習等を受講し、応急手当ての知識、技術を習得していただくための効果的な方策を検討してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

◆(岡本康宏君) ただいま私の質問に対しまして、それぞれ消防長から前向きな回答をいただきました。ありがとうございました。
 集団災害時のトリアージについては、今後とも医師会等との連携を強化していただき、東海地震、東南海地震に備えていただきたいと切に願う次第でございます。
 私がこのトリアージを調べている間に、もう一つ目についたものがありました。CSMという言葉です。これはコンファインド・スペース・メディシンの略ですが、日本語に訳しますと、瓦れきの下の医療という意味だそうです。つまり、災害現場で瓦れきの下に閉じ込められた人に対し、医師らが点滴などの治療を施しながら救急活動を行うというものです。あの阪神・淡路大震災ではまだ活用されていなかったそうですが、今回のJR福知山線脱線事故現場では手際よく対処されていたそうです。阪神・淡路大震災の教訓が生かされた事例かもしれません。このような取り組みが医師会等を中心に研究が進んでいるとも聞いております。私は、東海地震、東南海地震がいつ起きてもおかしくない名古屋市として、人命救助に必要なあらゆる知識を習得していただき、最善の準備が必要かと考えますが、このCSMに関する取り組み等、現在の状況につきまして改めて消防長にお伺いいたします。

◎消防長(田中辰雄君) 集団災害時の救急救助活動におけるCSM、いわゆる瓦れきの下の医療について、再度のお尋ねをいただきました。
 瓦れきの下の医療は、災害時における医療活動を従来の救護所を中心とした活動から、最前線の救助現場にまで進めることによりまして、救命はもとより、その傷病者を救出した後の予後を最大限に改善させることを目指して、現場において救助活動と並行して行われる医療のことでございます。我が国におきましても、阪神・淡路大震災を契機といたしまして、その重要性が認識され、先般のJR福知山線列車脱線事故におきましても救助活動と並行して医療活動が実施されたことは、議員御指摘のとおりでございます。
 本市の場合、救出に長時間を要する場合や、救命のため直ちに医療処置が必要な場合には、災害現場へ医療チームを要請するなど消防部隊と到着した医師とが連携して活動を行っているところでございます。今後も災害現場に医師等の派遣がより迅速に行われますための体制について、関係機関と検討を行いますとともに、救助活動と医師等による医療活動が安全に、かつ、迅速・的確に行われますよう、医療機関とのより一層の連携強化に努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。

◆(岡本康宏君) 御答弁ありがとうございました。
 CSMにつきましても医師会等との今後も十分な連携をとっていただき、最善の災害対策ができるようお願いいたします。
 私たちが生きていく上で、災害は避けられないものです。いつ、どこで、どのような災害が自分の身に降りかかってくるかわかりません。しかし、日ごろから備えを万全にすることで、被害を限りなく小さくすることも可能ではないでしょうか。きょう私が紹介、質問させていただきましたことは小さなことかもしれませんが、このような小さな備えの積み重ねで災害対策が強固なものになってくると私は信じております。東海地震、そして東南海地震がいつ起きてもおかしくない名古屋市においては、今後とも市民と行政が一体となって災害に立ち向かえる、災害に強いまちづくりを推進していきたいと思っております。松原市長が掲げている安心・安全なまち名古屋の実現に向けて、行政として、消防局だけではなく全局の最大限の努力を強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

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